インプラント治療を行った場合に確定申告が必要な理由とは

インプラント治療は、歯を失った方に対し、非常に優れた治療方法として行われております。
しかし、高額治療であるため、インプラント治療を行うと高い治療費用が必要となります。
この時支払った治療費用は確定申告を行うことにより、一定の金額が返還されます。
今回は、インプラント治療と確定申告(医療費控除)について詳しく説明いたします。
インプラント治療とは?
インプラントとは、失った歯の部分に人工の歯根(フィクスチャー)を埋め込み、歯根部に土台(アバットメント)を立て、最終的に被せ物(上部構造)を装着する治療法です。
保険が適用にならないため高額な費用が必要となりますが、機能と審美性に優れ、他の歯にも影響がほとんどないので、保険治療であるブリッジや入れ歯による治療よりも優れています。
また、天然歯に近い自然な噛み心地のため、しっかりと噛むことができます。
インプラントは失った歯の部分のみ治療を行うため、ほぼ他の歯に影響を与えないことから、他の歯の健康のことを考えるとインプラントが最も適していると言えます。
自由(自費)診療とは?
日本の医療制度は、国民皆保険という制度のもとに成り立っています。
国民が月々支払っている社会保険によって、さまざまな疾病の治療が行われています。
その際、治療費は全額ではなく、一定の額の割合の負担で済みます。
しかし、高度先端医療や美容整形の治療では保険治療が行うことが出来ない場合があります。
そのような治療は「自由診療(自費治療)」と呼ばれ、その医療行為に掛かる負担額は、患者が全額負担しなければいけません。
歯科における自由診療として、セラミックを用いた審美治療、インプラント治療、矯正治療、歯のホワイトニングなどが挙げられます。
確定申告とは?
確定申告とは、1年間の収入にかかる税金(主に所得税)の額を計算し、税金を支払うための手続きです。不動産所得や事業所得などの所得がある方や多額の所得があるサラリーマンも確定申告をする必要があります。
確定申告を行うことによって「納めすぎた税金が還付金として手元に戻ってくる」場合(還付申告)があります。
また、1年間である一定額の医療費が生じた方も確定申告すると一部返金されます。
これを「医療費控除」といいます。
医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間(1月1日から12月31日まで)のうち、自分とその家族が支払った医療費の合計がある一定額を超えた場合、その医療費の額と収入から計算された金額が返還されることです。
医療費控除は、医師、歯科医師の診察、治療で生じた費用や、マッサージ師、あんま師などの施術で生じた費用などが主な適用対象となります。
他に医療費控除の適用対象となるものを以下に挙げます。
・医療機関に支払った診察費・治療費
・治療に必要な薬等の購入費
・通院費用
・入院時の食事などにかかった費用
・妊娠から産後までの診察費、治療費等
・あんま、鍼灸、指圧の施術費
・義肢、義足などの購入費
・歯科での自由診療
・訪問看護ステーションや老人保健施設、療養施設の使用料
・特定検診・特定保健指導に掛かる費用、介護費、食費、居住費等
しかし、自家用車を使用した場合のガソリン代やタクシーの使用による交通費については、原則含むことができません。
歯科においては、審美、容貌的な治療に特化していると認められるような治療の場合、医療費控除の適用対象ではないと判断されてしまう場合があります(とくに、矯正治療で多くみられます)。
また、ローンで支払った場合の金利や手数料は医療費控除に含むことはできません。
控除額について
医療費控除の計算式は以下の通りです。
(一年間に支払った医療費の合計-保険金などで補填された金額)-{10万(所得の合計額が200万円以下の場合は所得の合計額×5%)}
ただし、この医療費控除=実際に戻ってくる額ではなく、「医療費控除額に所得税率をかけた額」が実際に戻ってくる金額となります。
所得税率は以下の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 0.05 | 0 |
195万円超~330万円以下 | 0.1 | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 0.2 | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 0.23 | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 0.33 | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 0.4 | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 0.45 | 4,796,000円 |
同じ医療費控除額だったとしても、収めた所得税が多ければ戻ってくる額が多くなり、収めた額が少なければ、戻ってくる額は少なくなります。
例えば、課税所得が300万円で、医療費控除額が20万円の場合では税率が10%なので、20万×10%=2万円、そして、住民税は収入に関係なく一律10%なので、20万×10%=2万円となり、合計で4万円の税金が戻ってくることになります。
確定申告の仕方
医療費控除は年末調整の対象外であるため、「確定申告」を行わなければなりません。
社会保険から送られてくる手紙などで一年間の医療費の合計が分かるはずです。
その合計が10万円を超えていたり、医科や歯科での自由診療やマッサージ等の施術などの合計が10万円を超えていた場合は確定申告をするようにしましょう。
次に、一年間にかかった世帯の医療費や交通費など医療費控除の適用になるかを確認し、合計を計算します。
また、保険金についても確認しましょう。
最近の確定申告では、領収証の提出が必要はなくなったものの、必要な場合は提出しなければいけません。
しっかり保管しておく必要があります。
そして、必要な書類(医療費控除に関する事項を記載してある確定申告書、源泉徴収票、医療費の支出を証明する証明等)に記入し、各税務署で確定申告をします。
確定申告の時期は、翌年の2月16日~3月15日までですが、医療費控除による還付申告のみを行う場合は翌年1月から申告書の提出ができます。
なお、提出期限は確定申告期間と関係なく、その年の翌年から5年間できます。
まとめ
インプラント治療をする方は健康志向が高く、高収入である方が多くみられます。
例えば、年収1,200万の方が2本のインプラント治療を受けたとします。1本のインプラント(上物も含む)を30万とすると、2本で60万かかります。
医療費控除額が60万円
↓
課税所得が1,200万円なので税率は33%
↓
所得税分が60万円×33%=198,000円
↓
住民税分が60万円×10%=60,000円
↓
戻ってくる額は、198,000円+60,000円=258,000円
およそ半額が戻ってくる計算となります。
医療費控除は、年間最大200万円と範囲は決まっていますが、インプラント治療は高額治療になるため、収入が多ければより多く支払われた費用が戻ってきます。
インプラント治療を受けた方は必ず医療費控除を行うようにしましょう。
さらに、最近ではインターネットで確定申告が手軽に出来るようになっており、領収証などを提出する手間がいらなくなっています。
国税局のホームページを見ながら確定申告をすると気軽にできるので、利用してみてはいかがでしょうか。