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八重歯はコンプレックスになること以外にもデメリットがあります


噛み合わせや歯並びの異常を、不正咬合(ふせいこうごう)といいます。

不正咬合にはいろいろな種類がありますが、中でも比較的多く見られるのが、八重歯(やえば)です。

八重歯は、前歯部に現れる不正咬合なのでとても目立ちます。実は、八重歯には見た目以外にもさまざまなデメリットがあるのです。

今回は、八重歯という不正咬合によって生じるデメリットについて解説します。

八重歯とは

八重歯は、上顎の犬歯という前から数えて3番目の歯が外側にはみ出した歯並びのことです。

この名前は正式なものではなく、歯科医学的には上顎犬歯低位唇側転位歯といいます。低位とは、噛み合わせるべき歯と噛み合わせられない”低い”位置に生えているということを意味しており、八重歯は下顎の犬歯と接触することはできません。

八重歯はドラキュラの牙のように見えてしまうので、結婚や就職に影響することから欧米諸国ではとても嫌がられます。

わが国でも、笑うときに無意識に手で隠してしまうなど、コンプレックスに感じてしまう人も多いです。

八重歯の原因

八重歯になる原因は、実は乳歯から永久歯への生え変わりの順序にあります。上顎の犬歯が生えてくるのは、11〜12歳ごろです。

実はこの年齢になると、ほとんどの乳歯が永久歯に生え変わっており、最後に生え変わるのがこの上顎犬歯となる場合が多いのです。

誤解しないでいただきたいのですが、あくまで乳歯から永久歯への生え替わりの最後という意味で、上顎の犬歯が生えた後にも第二大臼歯や親知らずなど永久歯はまだまだ生えてきます。

犬歯が生えてくる時、すでに他の永久歯に場所を取られており、上顎の犬歯が生えてくるべきスペースがなくなっていることがあります。

そうなると歯の並びの列に上顎の犬歯が入ることができなくなりますので、外側にはみ出して生えてしまうのです。

犬歯の役割

上顎・下顎ともに、前歯と奥歯の境界付近に生えている歯が犬歯です。実は、犬歯は全ての歯の中で最も根が長い、とても丈夫な歯です。

下顎骨は、上顎骨からぶら下がっているだけの骨なので、下顎の位置は非常に不安定です。

そんな不安定な下顎の歯が、舌や頬を噛むことなく、きちんと上顎の歯と噛めるのは、上顎と下顎の犬歯が最初に接触することで、下顎の位置を無意識に修正しているからではないかと考えられています。

犬歯の構造がかなり丈夫にできているのは、下顎の位置を誘導するときにかかる力に耐えるためなのです。つまり、犬歯には、下顎の位置を修正して、正しい位置に持っていくという重要な役割があるのです。

八重歯のデメリット

八重歯には、見た目以外にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

むし歯や歯周病の原因

八重歯は、他の永久歯の歯の並びから離れた位置にあります。そのため、歯みがきがしにくくなります。

もちろん、歯みがきがしにくくても、ていねいに時間をかけて磨けばきれいにできますが、八重歯が生えてくる小学生の頃から、毎食後ていねいに歯みがきを続けるというのはなかなか難しいものです。

歯みがきがしにくくなるので、むし歯や歯周病の原因となります。

顎関節症になりやすい

前述した通り、犬歯には下顎の位置を正しい位置に持っていくという大切な役割があります。ところが、八重歯の場合は上顎と下顎の犬歯が接触できませんので、下顎は適した位置を見つけにくくなります。

そのために、下顎の位置や動きが不安定になり、上顎骨と下顎骨が繋がっている顎関節に大きな負荷がかかり、顎関節症を引き起こす要因となります。

お口を開け閉めするときに、スムーズに開けられない、お口がしっかり開かなくなるなど、八重歯は、顎関節症のリスクを高めてしまうのです。

歯茎が下がりやすい

歯を支えている骨を歯槽骨(しそうこつ)と言いますが、歯槽骨の厚みは奥歯より前歯の方が薄い傾向にあります。

上顎の犬歯も同様で、もともと歯槽骨の厚みが薄いのですが、八重歯になると外に飛び出している分、さらに薄くなってしまいます。歯槽骨の厚みが薄いと、歯茎も弱くなりますので、歯茎が歯みがきのときの刺激で容易に下がってしまい、相対的に歯が長く見るようになります。

八重歯も同じで、歯みがきの方法が適切でないと、歯茎が下がり、より大きな八重歯に見えるようになってしまいます。

他の歯への負担が増す

八重歯になるとうまく噛めません。

すると上顎の噛める歯が減ることになりますので、結果的に少ない本数の歯で噛まざるを得なくなり、1本あたりにかかってくる噛み合わせの負担が増加します。

噛み合わせの力の負担が大きくなると、長い目で見ると咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)とよばれる状態を引き起こし、歯槽骨など歯を支えている組織を弱らせてしまいます。

つまり、歯周病を悪化させる要因になるのです。

口内炎の原因になることも

八重歯は、その向きや位置によっては、頬や唇にあたり口内炎の原因になることもあります。

それだけでなく、転倒や事故などの際、八重歯が原因で頬や唇を切ってしまう可能性さえあるのです。

顔つきへの影響

八重歯は、歯の並びよりも外側に生えているので、その分八重歯のあたる部分の頬が外に膨らんでしまいます。

口の端あたりの頬が外に膨らむことで、小動物のような顔つきに見られてしまう可能性があります。

お口を不潔にしてしまう

お口を閉じにくくするような八重歯では、お口の開いている時間が長くなり、お口の唾液が蒸発してお口が乾燥しやすくなります。

唾液は、お口の中の細菌や汚れを洗い流したり、細菌の繁殖を抑える抗菌作用を示したり、むし歯になりにくくするなど、お口の中の環境を健康に保つさまざま役割を果たしています。

八重歯は、唾液の役割を低下させてしまいますので、細菌の量や活動を抑えることができなくなり、お口の中を不潔な状態にしてしまう恐れがあるのです。

まとめ

今回は、八重歯がもたらす見た目以外のデメリットについて解説しました。

八重歯は、その歯並びから見た目のコンプレックスだけについつい目が行きがちになりますが、実はそれ以上に、機能的な意味でのデメリットがとても大きいのです。

八重歯の見た目をコンプレックスに感じていなくても、放置しておくことでお口のさまざまなトラブルの原因となりますので、八重歯の方は、歯科クリニックで一度相談なさることをおすすめします。